特定非営利活動法人ふるさと空き家相談・サポート/古谷まち子さん(平成30年度/第15期生)

特定非営利活動法人ふるさと空き家相談・サポート/古谷まち子さん(平成30年度/第15期生)

NPO法人/水戸市

今回は、2019年11月に空き家管理などに取り組む特定非営利法人を立ち上げた、平成30年度卒塾生の古谷まち子さんにお話を伺いました。

事業内容について教えてください。

空き家の所有者や将来的に空き家を所有する方からの、さまざまな相談内容に応じて、必要な関連業者と連携を図り課題を解決します。主に、空き家・空き地の「利活用」「発生抑制」「適正管理」を軸にした活動を行っています。

1. 空き家に関する相談・支援を行い利活用を進めます。
セミナー(テーマ:空き家の現状、相続、終活など)とセットで相談会を定期的に行い、適正な管理、利活用の啓発を行いつつ、相談窓口へのスムーズな流れを構築します。また、専門家と連携した空き家のワンストップ相談窓口を設置し、「どうしたらよいのかわからない」「どこに相談したらよいのかわからない」所有者が安心して相談できる環境を提供します。
空き家所有者が利活用する上で抱える問題は、相続や建築基準法、農地法、登記など多岐に渡ることが多く状況は相談者によって違うため、相談内容に応じ、各連携協力先(行政・自治会・専門家など)と連携し、「空き家バンク」への登録促進や地域に合わせた利用可能な制度の発信などにより、利活用を図り、地域活性化を目指します。

2.空き家に関する情報を収集・提供し発生抑制につなげます。
Webサイト、SNSを利用し啓蒙活動を行います。そのほか、地域全体における問題意識の共有化や、空き家所有者(将来的に空き家を所有する方含む)に対する啓発活動を行います。また、役所担当窓口、地元自治会、地域包括センター、福祉施設などとの連携により、発見されていない空き家(予備軍含め)の掘り起こしを行い、空き家になる前の事前相談を促し、権利関係や登記、相続について早めの対策を提案し空き家の発生を抑制します。

3. 空き家の維持・管理を行い適正管理を支援します。
管理不全な空き家が防災、防犯、衛生、景観などで問題を生じさせ、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすとともに、地域の活力低下が懸念されています。
所有者自身も、近隣への迷惑などを考え、管理が必要であるとは認識し自身で管理を続けている方もいます。また、認識しながらも距離・費用・労力・心情的・介護施設への入所などの理由で管理ができない状況にある方や利活用予定が無い空き家の管理費は、無駄になるという考えを持つ方など、さまざまです。
空き家は、適正に管理されず放置しつづけると、いざ活用しようとした時に、大きな修繕費が必要となることがあります。適正管理する動機づけを強めるためにも、所有者の管理責任を認識してもらうとともに、賃貸・売買・解体・リフォームなど所有者の意向に合わせた活用が実現可能となるよう、空き家適正管理の支援を行います。

創業したきっかけを教えてください。

普段は、株式会社葵建設工業で総務と経理を担当しています。2018年3月に、代表から新規事業提案のミッションを与えられたことがきっかけです。社員の成長機会を与えるためのようでしたが、当時一番下の娘が2歳で手がかかる時期であったので、一度はお断りしました。その半年後に再度お話を頂き、勉強のために、とまずは、コワーキングスペース水戸ワグテイルで開催している「事業計画書作成勉強会」に参加しながら、どんな事業がいいか?を探していたところ、「未来の年表」という本を読み衝撃を受けました。

人口減少に伴いこれから日本で起こることが時系列で書かれている本ですが、インフラ整備の遅れ・ダブルケア・老老介護から認認介護・火葬場不足・自治体消滅・空き家が3軒のうち1軒に、と描かれていました。その本を読み終わった後、普段見ているこの景色が荒廃してしまう、と考え暗い気持ちになりました。将来、空き家が立ち並ぶこの町を子どもたちは誇りに思ってくれるのだろうか、と漠然とした不安を抱きながらも、自分のこどもだけではなく未来のこどもたちのために親として何かできることはないか?と焦燥感・使命感を感じはじめ、未来の子どもたちが誇れるふるさとにしたい、そう思う気持ちが日に日に強くなっていきました。その想いをミッションとビジョンに明言化しています。

わたしが住む地域では、1人暮らしの高齢者世帯が多く点在しています。3軒のうち1軒が空き家になると予測されている2033年よりもっと早い段階でそうなると思いました。
空き家を所有することで抱える悩みを相談できる空き家の相談窓口を探したところ、地元に密着した事業者がいなかったため、わたしがやってみようかな?と、空き家に関する情報を集め始めました。事業計画書を何度も作成しましたが、収益性の高い事業ではなかったこと、深刻な社会問題への対策強化のためには、行政と民間、地域住民が協力して解決に向けた取り組み(協働)が必要であると考えはじめ、ワグテイルの「事業計画書作成勉強会」を受講した際、NPO法人の設立を勧められたこともあり、代表に提案をしたところ、了承を得て昨年無事にNPO法人を設立することとなりました。NPOの監事でもある社長からの了承も得ており、本業と複業を同じ席で仕事ができる環境はとてもありがたいです。

「みと創業支援塾」を受講していかがでしたか。

ワグテイルでいくつかのセミナーを受講していたところ、創業について体系的に学べると聞き受講させていただきました。
創業の基礎知識だけではなく、人脈ネットワークを構築することや事業化に向けて多くのヒントを得ることができ、受講して良かったです。
・人脈ネットワークが拡大した(担当講師、講師から関連事業者への紹介、受講生との繋がりからの相互支援。)
・事業のヒントを多く得られた(NPO起業のきっかけ、他団体との接触機会、事業展開など)
・補助金制度の活用(水戸市創業期支援補助金・小規模事業者持続化補助金(「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者については、補助上限額が100万円に引き上げ。)

今後の展望について教えてください。(大切にした思い、今後の計画や夢など)

①多拠点化
1.安心して、相談したいときに相談できる環境を整えるため
2.地元密着型の団体として継続した活動を行うため
3.自治会活動拡大のため
に、拠点を多くつくりあげたい。(地域の状況に合わせた配置。1自治体につき2か所以上)

②多角化
多拠点において、当事業所にカフェを併設、シェアキッチンを設置するなど、子供から大人まで誰でも自由に利用できる施設とし、地元コミュニティーが生まれる場所の提供や、イベントを開催し多世代交流を促進。また、空き家のみならず、一人暮らし高齢者への見守りサービスや庭の手入れを代行するなど福祉の分野へも拡大したい。

③行政との連携
所有者の意向のみならず、自治体の計画するマスタープランや総合計画を踏まえた地域社会のビジョンに即した提案を行い、活用を促すことで、行政と連携し住みよい町づくりへ貢献したい。

ミッション・・・空き家に関するすべての方の支援を行い、地域の活性化と地域住民の不安解消、および、ふるさとの景観保全を目指します。
ビジョン・・・未来のこどもたちが誇れるふるさとに。

人口減少に伴う社会問題は多岐に渡ります。悶々と誰か(特に行政に期待してしまいがち)が、何かをしてくれるのを待つよりも、私たち一人ひとりができることを始める時期なのではないかと思います。事業を計画するにあたり、事業に対して前向きな反応や支援の声を多くいただきました。1人では、到底成し遂げられない社会問題だとしても、同じ思いを持つ人が1人でも多く集まり、1人ひとりが自分ごととして捉える範囲をちょっとずつ広げ、身近にいるプロフェッショナルな方々にご協力いただけたら、何かは変わるかもしれない、変えられるかもしれない、そう感じるようになりました。すぐに結果が出る事業ではありませんが、空き家が爆発的に増えるであろう10年後、その先の50年後を見据えながら、今できることをゆっくりでも確実に取り組んでいこうと思っています。

ショップデータ

特定非営利活動法人ふるさと空き家相談・サポート
設立年月:2019年11月
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